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過去にアンケートのお礼として、ご協力いただいた方にのみ公開していました。

フリオデでシリアス。
基本はラブのはずなのですが、糖度は低めです。





 本当は凄く近い所に、答えはあったのだ。だけど、私はそれを探すことに酷く苦労させられた。
 そして、それを選ぶことにさえも。
「私を、水路に投げこんで・・・。私が死んだことを、知られないように・・・」
 最後まで、あの人の前でその答えを選ぶことができなかった。
 申し訳ないと思う。それでも、信じて欲しくて、薄暗い景色の向こうに向かって言葉を紡いだ。
 声がかすれてしまったのは、きっと今まで抑えていた気持ちが膨らみすぎているから。
「それから・・・伝えて、くれる・・・? あの人に・・・」





「こちらでの交渉が長引きそうなのだけど、レナンカンプの方に残してきた兵達が心配だわ。サンチェスの連絡では商人に対する警戒までもが厳しくなるようだし・・・。それで、ハンフリー、ビクトール、先に戻って兵と街の安全を確保してもらいたいのよ。出来れば今すぐにでも」
 宿の一室で、1人の女と3人の男が顔を見合わせるように立ったまま話していた。外套も外さず、荷物を下ろすこともしないままの姿が、部屋に入ってすぐこの状況になったことを窺わせる。
「随分信頼してくれるねえ。その人選の根拠を聞いてもいいか?」
 幾分控えめな音量のオデッサの声に、多少の冗談もこめてそう言い返したのは、最近仲間に加わったばかりのビクトールだった。
 ごっつい体格、ぼさぼさの黒髪、無精髭。流れ者とか荒くれ者とかいった言葉が似合いそうなその男を、隣にいた青いマントの青年がかすかに睨んだ。
 そんな様子を見ながら、オデッサはまるで世間話でもするような軽い笑顔を向ける。
「あら、あなたたちの腕を見込んで、という理由では不足かしら。この4人の中で、戦い慣れている方から2人選んだら、きっとあなたとハンフリーになると思うけど?」
「あー、まあ確かに、このぼうやじゃなー」
「誰がぼうやだ!」
 にやりと口の端を持ち上げて隣に目をやれば、すかさず反論が返ってくる。
 そんな様子に、オデッサはさも楽しそうに声をあげて、何事もなかったように話を進めた。
「ね、だから。あなたは私に疑いを持てと言いたいのでしょう? だけど、どうせ人の心の内なんて分からないのだから、信じていた方が気持ちが楽というものよ」
 そのご忠告だけ受け取っておくわ。
 片目をつぶってそんなことを言ってくれる彼女に、ビクトールの答えはげらげら笑うことだけだった。
 そんな様子に、ぼうや呼ばわりされたフリックは相変わらず疑いの眼差しを向けていたが、オデッサはビクトールと同じく満足そうに微笑む。
「それじゃ、行くとしますか。おいフリック、しっかり守ってやれよ」
「お前に言われるまでもない」
 最後まで冗談半分のような顔をした男と、無口な男が部屋から出て行くのを見送って、その足音が遠ざかるのを確認してから、フリックは耐えかねたようにオデッサに向き直った。
「オデッサ! 本当にあの男を信用してるってのか?」
「ええ」
「あんな、どこから来たかも言わないような男だぞ? 何かしでかしたらどうするんだ」
 もしも帝国の息のかかった人間だったら、リーダーであるオデッサに近づいて何をするかわからない。危害を加えるかもしれない。果ては解放軍の内部解体も考えられる。
「そうなったら仕方がないわ。私の見誤りね」
 やっと手荷物をおろし、目を引く緋色のマントを肩から外しながら、万が一にもあってほしくない事態をさらりと口にする。
 目を合わせられない方向を向いてしまった彼女に、思わず一歩、もう一歩踏み出してしまう。
「だったら俺が行った方が・・・!」
「あなたが行ったら」
 フリックの声を、さほど大きくもない声がぴしゃりと遮って、くるりと向きを変えたオデッサの強い目が思いの外近くに映る。
「誰が私を守ってくれるの?」
「あ」
 おそらく、どちらもやる気だったのだろう。彼の時が一瞬、止まった。
「私を守ってくれないの?」
「それは・・・・・・・・・」
「・・・・・・あははははっ、いやね、冗談よ。ふふ、あははははっ」
 一瞬ぽかんとしたフリックの表情に、オデッサはたまらず腹部を押さえたりフリックの肩をばしばし叩いたりして大笑いする。
 その格好のまま彼の表情を見れば、今度は怒ったような、憤ったような、複雑な顔をしているのが見えた。何を考えているのか、すぐに分かってしまう。
 自分のやろうとしていることを、望みを、全力で叶えようとしてくれている。一人では全部出来ないことさえ忘れるほどに。
「ふふ、はぁ、ごめんなさい。あなたを信頼していないんじゃないのよ。私はみんなを信頼しているから」
「・・・だから、それが危険だと・・・」
 多少視線を落として、自分自身にいらだつ気持ちを両手を握ることで押し込める。けれどそれが言葉にしっかりのっかってしまって、先が続かなかった。
「フリックこそ、私を信用してちょうだい。嘘をつく人は口が歪んでるっていうし、私ね、人を見る目には自信があるのよ」
 それに、と呟きながら、うつむいた彼の顔の真下に滑り込んで見上げる。
「あなたにいて欲しかったのも、本当」
 至近距離で見上げた彼の顔は、一瞬で耳まで赤くなった。
 至近距離で見つめる彼女の目には、間抜けな表情の自分が大きく映っていた。
 驚きと、照れ隠しで一歩下がろうとするフリックを、オデッサの腕がマントを軽く掴んでとどまらせる。
「私を心配してくれるのよね、ありがとう。けどあなたのことだから、何でも自分の所為にしてるでしょう?」
 そらすことを許さない瞳が問いかける。欠片の嘘さえ見破られるような錯覚さえ覚えるほどに、その光は強く、美しかった。
「もっと自分がああだったら、こうだったらって、いつも考えてるでしょう。もしそれが私の為のことなのなら、今すぐやめて。そんなことは自分の為に考えて」
 そこまで強い調子で言って、言い切ったことの満足なのか単に空気が足りないのかわからないような様子で「ふーっ」と自分で言いながら大きく息をつく。
「分かった?」
 表情を一変させ、今度は冗談めかした言葉。
 真摯な瞳で人を叱り、最後は笑顔を向けてくれる。そうやって彼女は、誰かのために厳しいことを言っても、その後は必ずその人を認めているのだと分かるように微笑んで、背中を押してくれるのだ。
 けれど、それも傍で見ていると辛いことがある。
 今も。
「そうやって」
 呟いて、目の前にあったオデッサの頭を軽く自分の胸元に引き寄せる。彼女の額が胸につくかつかないか、抱き寄せていない体はほんの少し離れたまま、彼女に逃げられないうちに言葉を紡ぐ。言わない方が良いのかもしれないと思いながら。
「そうやっていつもお前は人のことばかりなんだ。・・・いつも、自分は二の次なんだ。けどな、少しは、心配させろよ」
「・・・・・・」
 多少苦しそうに聞こえるフリックの声を聞いて、オデッサが無言で見上げた。
 真意を窺うような、感情を読み取らせない、そんな目をして見上げてくる彼女にいらだちに似た感情がますます膨れ、言わない方が良いかもしれないという思いは力を失った。
「せめて、俺には心配させろよ! こんなに近くにいるのに、辛そうな顔しているくせに・・・っ」
 俺には、心配させろ。
 かすれる声でもう一度そう呟いて、言葉を切った。驚きを含んだオデッサの目を挑むように見つめながら、彼女の言葉を待った。
 ほどなく、彼女の額がフリックの胸にこてん、と落ちてきた。
「・・・ありがとう、フリック。そんな風に言ってくれるあなただから、私も甘えてしまうのね」
 弱くはないが、普段の強さも感じないぼんやりとした声がそう呟く。
「オデッサ・・・」
「もう一回、呼んでくれる」
 解放軍リーダーじゃない「私」を呼んでくれることが、今は何より嬉しかった。目を閉じたら、彼の言葉に従って、この暖かさに甘えて、膝をついてしまいそうだった。
「オデッサ」
「・・・うん、ありがとう」
 空気が、かすかに笑った気配を伝えてくる。
 その気配をきっかけに、フリックは彼女を抱き寄せようとした。
「・・・だめ。そこまで、甘えられない」
 オデッサは彼の胸元を少し手で押して、一歩分距離を作る。
 彼はまた怒るだろうか、と、少し不安に思ってその表情を窺ったが、そこにはいつもどおりの優しい笑顔があった。
「分かったよ、オデッサ。だが、もう一つ言わせてもらうぞ。お前、今日はもう休め」
「え・・・?」
 オデッサがその言葉の意味を考えている内に、フリックの手のひらが額から頬をなぞっていく。
「こんな青白い顔して『大丈夫』とか『平気』とかいう言葉は今日は言わせないからな」
「え、でも、いつ使者が来るか・・・、それに考えることもまだ」
「俺は、副リーダーなんだろう?」
 いつになく力を感じるフリックの言葉に、嬉しいような、安心したような気持ちがわき上がって、反論する気は起きなかった。
 自分の中の葛藤も、わざと線を引いたこの気持ちも、きっと彼には伝わっているのだろう。はっきりと分かっていなくても、漠然と感じ取っている。彼は、私を分かってくれている。
「もう、こんなんじゃ私リーダー失格ね。じゃあ暫く後を頼むわ、副リーダーさん」
 いつもどおりの笑顔を返すと、彼もまた、いつもの笑顔で応えた。





 ずっと、自分にとっての「たった1人」を作ることが怖かったのだ。だから、選べなかった。あの人の恋人としての自分を確かに感じてしまったら、きっと戦争などできないから。
 彼は優しいから、自分が甘えたい時にはいつだって受け止めてくれるだろう。
 だからこそ、「リーダー」の檻を利用してごまかしていた。境界線を強調するように。彼がそれに傷ついていたことも、時に怒っていたことも知っていたのに。
 けれどようやく、それを選ぶことができる。
「伝えて・・・ほしいの・・・、あなたのくれた・・・優しさは・・・、いつでも、私を・・・慰めて・・・くれた、・・・って・・・」
 目の前で、少年が泣いている。力の入らない自分の体を支えてくれている男も、必死に呼びかけている。
 けれど、もう私の視界には、あの人ばかりが浮かんでいた。
 私を心配する優しい顔。私をかばってくれる時の背中。他愛もない話をする時の、幼い表情。
 鮮明に思い出すその顔に、やっと、恋人として微笑むことができる。
 心の中にはこんなにも愛しい気持ちが詰まっていたのだ。溢れて、溢れて、苦しいほど。
 溢れた愛しさが、両の瞳から透明な滴となってこめかみへ流れていった。
「・・・会い、たい・・・、フリック・・・、会いたい・・・」
 いつかの暖かさを思い出しながら、やがて意識は白く溶けた。





あとがき

お礼だったのにこの暗さ…(苦笑)
分かりにくいですけど、彼女が敵の矢に倒れたあのシーンです。
オデッサはゲーム中登場期間がものすごく短いですけど、
幻水1で一番好きなキャラになるほど魅力的な人でした。
故にフリオデも大好きです。フリックがいつも可哀想だけど(苦笑)

オデッサの自分の生よりも仲間や国のことを考える姿勢からも、
精神的にすごく大人というか、できた人だなぁと思います。
だからこそ、公私ががっつり分けられるというか、ストイックというか。
それでいて自分を犠牲にしている雰囲気はちっとも見せてないような…。
考えれば考えるほど切なくなりますね。
希望としてはフリックがその辺分かっていて欲しい。
それで時折恋人らしく支えてくれてるといいと思います。
恋情じゃなくて尊敬と愛情かな、なんて…!(にぎりこぶし)



お題配布元:おつまみ提供所。
【後に続けて書くお題】
1:その時私は、彼が言ったその台詞の意味をいまいち理解出来ていなかった。→コルダ
2:勢い良く扉を開けて、案の定な様子に私は盛大な溜め息をつく。→DQ5
3:いきなりだが、私は物凄く悩んでいた。どうしてこの人がここにいるのだろう?→オリジ
4:あの日からどれだけ、俺はコイツに振り回されたことだろう。→FF6(本家)
5:本当は凄く近い所に、答えはあった。けれど、私はそれを探すことに酷く苦労させられた。→幻水1
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