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ファーレの日常パートSS。
版権キャラは出てませんが、人様のキャラさまに勝手にご登場いただいてます。
ご本人さまに限り苦情受け付けます…




 一瞬で焼き菓子と分かる香りが、厨房とそこに隣接する食堂をやわらかく包んでいた。
 いくつものテーブルが並べられた食堂には、香りそのものが消えるのを名残惜しむような、ふんわりとした甘さが残っている。
「前から聞いてみたかったんだけど」
 これまでの話題を横に置く台詞に顔を上げると、テーブルを挟んで向かい合って座るシーナの一対の紺青と目が合った。灰色がかった紫黒の髪が、その瞳の前でさらりと揺れる。作業着と後ろ髪を一つに束ねた出で立ちが、仕事の合間であることを窺わせた。
 前置きなんて珍しいな、などと思いながら、ファーレは口の中に残っていたガトーショコラを飲み込んだ。一呼吸遅れて返事をする。
「なにかしら」
「最近どうなの、未来の旦那様は」
「どう…?」
 少し記憶を遡り、やがて一つ嬉しいことがあったことを思い出す。
「そうそう、アップルパイが割とお好きなんだって、最近気がついたんですよ。…他のデザートの時より、ちょっとだけ嬉しそうかなって思っただけなんですけどね」
 気がついたその時を思い出すと、今でもなんだか楽しくなって顔が緩む。
 随分前に好き嫌いを尋ねたことはあるのだが、その時は本人も自覚がないのか知ることができなかっただけに、些細なことだが大発見だった。
「ファレ、ファレ。嬉しそうなとこ悪いけどそうじゃなくて!」
 とろりとした笑顔の前で、シーナが「帰ってこい」という風に手をぱたぱた振りながら声をかけた。
「あたしが聞きたいのは、二人きりの時はなんて呼び合ってるのかーとか、婚約指輪的な物はないのかーとか、そういうことっ。いつもみたいに『うふふ?』って笑ってごまかしてもダメだからね!」
 勢いよく捲し立てると、シーナは右手に持ったままのフォークをびしっと突きつけて、「白状なさーい」と迫った。
 ファーレが「ごまかしてるつもりは少しもないんですよ」と「フォークを人に向けるなんてお行儀が悪いですよ」のどちらを先に言おうかと考えているうちに、更に一押し。
「ぶっちゃけ、どこまでいってるの?」
 周囲に他の人がいないからか、この日は質問に遠慮がなかった。あっさりとボリュームアップした快活な声に、今日こそ聞き出してやる、という意気込みが感じられるような気もする。
「ごまかしてるわけではなくて、いつも通りなだけですよ」
 フォークについては諦めて、素直なところを口にした。
 仕事の合間、タイミングが合う時には一緒に食事をしたりもするが、それにこだわっていることもないし、特に呼び方を変えていることもない。
 ファーレは指輪やその跡の代わりに、焼きたての鉄板にうっかり触れてしまった火傷の跡があったりする手を、顔の高さまで上げてくるくるさせて見せた。
「見ての通り指輪はないですし、ぶっちゃけるようなこともこれといって」
 アクセサリーはお互いお仕事の邪魔になっちゃいますしね。
 理由を後付けしながら、眼鏡を外したところを間近で見たことがあるのはレアかもしれない、などとちらりと考え、もったいないので言わないことにする。
 ファーレは口元が先程以上に緩みそうになるのを感じながら、甘い紅茶の入ったティーカップを両手で包んだ。
「だろうとは思ってたけどー」
 シーナはわざとらしく「むぅ」と唸ってのろのろとテーブルに両肘をつく。
「少しは陛下を見習ってもいいんじゃないかな、スキンシップ的な意味でも」
「…そういう方に見えますか?」
「全然見えないから問題なんだよ? ルギさんとそういう仲だって知らない人もいるかもしれないくらい」
「じゃあ、私が頑張るしかないですね。私はルギさんのですよ」
 その台詞を聞いたシーナがフリーズした時間はほんの一瞬だったが、言ったファーレには食堂の掃除くらいできそうな時間にも感じられた。動きを止めた濃紺の瞳ににこりと微笑んで見せる。
「…頑張ってみましたけど?」
「頑張り方違う気がする…全力で惚気られて誤魔化された感も満載でさ…」
 シーナはそう言いながら、両肘をずるずるとスライドさせて、脱力したようにテーブルの上に伸びた。
「あら。やっぱり慣れないことはだめですね」
「そうみたいね」
 不満げな表情を浮かべるシーナの代わりに、食堂の入り口の方から別の声が返事をした。
 二人は同時に振り向いて、近づいてくるその姿に安心したような明るい笑顔を向ける。
「リンさん、おつかれさまです」
「おつかれさまでーす」
 耳に心地よいしっとりと落ち着いた声の持ち主は、ゆったりと穏やかな微笑を浮かべながら「おつかれさま」と返した。
 真っ直ぐで艶やかな黒髪と、いつも穏やかな表情。柔らかい印象を与えながら、同時に何事にも動じることのなさそうな芯の強さを感じさせる黒曜石の瞳。
 眩しさを感じながら、ファーレは立ち上がって椅子を勧めた。
「ひと休みですか? 今お茶とお菓子を持ってきますね」
「それがまだ会議の途中なのだけど、長引きそうだからお茶だけいただきに来たの。六人分お願いしてもいいかしら」
「ええ、もちろんですよ。少々お待ち下さいね」
 壁の向こうへ消えていくファーレを見送ってから、未だテーブルの天板に近いところにいるシーナが、「あ」と一声あげてテーブルの傍に立つリンを見上げた。
「もしかしてずっと聞いてました?」
「ふふ、ごめんなさいね、入りそびれちゃって。スキンシップ的な意味あたりから少しね」
「入ってきて下さいよー。リンさんならもっと引き出せましたよ、きっとー」
「あらあら。でもさっきのような言葉はなかなか聞けないわ」
「そうですかー? じゃあ収穫あった方ですかね、ファレにしては」
 シーナはようやく不満げな表情を引っ込めてテーブルの上から起きあがった。
「そうね。あの彼も目に見えてびっくりするくらいじゃないかしら?」
「あ、その反応は見たいですね! どんな顔するんだろー」
「もう、お二人とも」
 うきうきと弾む声を隠そうともせずに笑い合う二人の元へ、ティーポットとカップの乗ったお盆を持って戻ってきたファーレが答えた。からかっちゃだめですよ、と訴えて見せながら表情は明るい。
「でも、内緒にして下さいね。きっと反応にすごく困ってしまいますから。あ、後で何か食べやすいお菓子とお茶のおかわりをお持ちしますね」
 笑顔とお願いと業務連絡と共に差し出されたお盆を受け取りながら、リンは「そうね」と小さく微笑んだ。
 同時にシーナが「えー」と再び唸る。
「シーナも、ね、お願い」
 冗談ぽい響きを残しながら懇願するファーレに、シーナは大仰に胸を張った。
「よし、プリン十個で特別に許そう」
「ありがたきシアワセ」
 シーナに合わせるように、ファーレも大げさなまでに恭しくお辞儀をする。
 台本を読むような芝居がかったやりとりをする二人を見つめる目を細め、リンは口元を艶っぽい微笑みで彩って囁いた。
「あとは、もう伝わってる、なんてことがないといいわね?」
「そんな!」
「まさか!」
 共に顔を見合わせ、一呼吸置いて三人で吹き出した。
 周囲に広がっていた甘やかな空気が、思い出したようにふわりと舞った。






あとがき

ナ ニ コ レ ( ´Д`)ノ ☆)><)
という声はもういっぱい聞こえていますのでご心配なく!(笑)
人様のオリキャラさんをゲストに捏造創作、とうとうやってしまいました。
出演いただいたキャラさまそして主さま、どうかお許し下さいませ…


恋バナしよう!…と思って書き始めたんですが、
ご覧の通り、中身のない話になりました。頭悪そうですね!(笑)

フィガロに指輪を贈る風習があるのかどうかは分かりませんが、
お互いにそれっぽいことを求めなそうです。むしろ気にしなそう。

ファーレ関連は基本こんな感じで、日常シリーズをゆるーくやらせていただきます。
楽しいのは自分だけですけどね! 知ってます!(開き直った)

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