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過去にアンケートのお礼として、ご協力いただいた方にのみ公開していました。

初、金色のコルダSS…ゲーム未プレイ時に書いてしまったオールキャラギャグです。
ゲームシステムを少々無視しています。ご注意下さい。





 その時私は、彼が言ったその台詞の意味をいまいち理解出来ていなかった。
 でも、思い出してみればその前兆は、確かにあの日からあったのだ。


『第一セレクション前』
 腑に落ちないこのイベントに参加させられた第一回目だ。参加者の学年、楽器が統一されているわけでもない。参加資格を得られたのは、オーディションがあったわけでもなく、「アレ」が見える、という衝撃の事実があったから。
 大マジに、「妖精さん」が見える、なんていう事実が。
 でも、悪いことばかりじゃなかった。参加者のみんなは、個性は強いけれどいい人だったし、音楽的なことは分からなくても、素直にすごいと思える実力者。そんなみんなとそれなりに仲良くなれたことは、良かったんだと思う。
「なんだ日野、緊張してんのか?」
「そりゃあ緊張だってするよ」
 そう切り返して見上げた普通科仲間のピアニストは、ちっとも緊張なんかしていないようだった。
「大丈夫、大丈夫。楽しくやろうよ、ね。日野ちゃん」
「楽しむ余裕がないですよ~。先輩は緊張なんてしたことなさそうですね、いいなぁ」
 ひょこっと現れて気さくに声をかけてくれたトランペッターが、心底羨ましかった。
「・・・・・・」
「あ、邪魔なとこ立っててごめんね。・・・月森君も緊張なんかしないんだろうね」
 いつも通りのあんまり感情が見えない顔で立っていたバイオリン仲間は、この時もやっぱり変わらなかった。
「緊張する時は、手のひらに「の」の字を三回書いて飲み込む・・・・・・あれ、「人」でしたっけ」
「「人」だと思うよ。志水くんも、堂々としてるよね」
「そうですか? ぼんやりしてるとは、よく言われますけど」
 ・・・「の」の字書いたら逆に開き直れそうだった。
「日野さん、そろそろ準備をしなくていいの?」
「あっ、そうですね。行ってきます」
 すっかり準備を終えたらしい大人気のフルーティストは・・・たぶん緊張とは対極の人だと思った。
「あっ・・・日野先輩、すぐどきますね」
「いいよいいよ、まだ平気だから」
 自分以外の女の子でクラリネティストの彼女は、いつも控えめで、とにかく可愛い。
 こうしてみると、一緒に頑張っている仲間、という面では非常に恵まれていると思った。


『第一セレクション後』
 何かの奇跡が起こって、一位通過してしまった。ど素人だったのに。
 ねえ、本当にこれでいいの?
 音楽って不公平なんじゃないの、妖精さん?
 内心、翌日からトマト投げられたりバナナ投げられたりするんじゃないかとヒヤヒヤしていたけれど、いつもと変わらない日常が訪れた。
 同じ舞台に乗ったみんなとも、心なしか距離が狭まったようにうち解けてきたのもこの頃からだった。
「あっ、日野ちゃん、おはよう!」
「おはようございます、火原先輩。…汗すごいですね」
「あ、これ? 坂の下からレ…じゃない、日野ちゃんが見えたからさ、ちょっと走っちゃった」
 先輩と挨拶を交わしたのが校舎の前だったから、たぶん坂の一番下から一番上までダッシュしたんだろう。そんなに頑張って追いかけてくれたことが、なんだか少し嬉しかった。
 ちょっとは仲良くなれたって、ことかな。
「それでね日野ちゃん」
「はい?」
 たぶん、些細なことに浮かれていたんだと思う。
「レッドって呼んでいい?」
 爽やかな笑顔で言われて、思わず笑顔で「はい」って答えてしまったのは、何かの間違いだと信じたい。
 もっとも朝の時点では、その時の冗談だと思っていたのだけど。
 その日の帰りに、冗談ではなくなった。
「レッド! お前も今帰りか?」
 す、既に定着している?!
 というか、あれは本当に火原先輩の冗談ではなかったの?!!
 少しの躊躇いもなく、これほど爽やかに、まじめに呼びかける土浦くんを見て、実は戦隊物好きなんじゃ、と疑った私は、きっと間違ってないと思う。
「あれ、月森くんだ。校舎の方に行くけど帰らないのかな。おーい」
「・・・何か?」
「校舎の方に行くからどうしたのかと思って。もう下校時刻だし」
「君には関係ない」
 いつも通り愛想のない答えだったが、だんだん慣れてきた。
「あ、もしかしてこれ?」
 差し出した譜面はビンゴだったようで、普段あまり動かない表情が驚きの表情になった。
「書き込みがないし、これがあった場所で練習してたの見たから、たぶんそうだと思って」
「拾っておいてくれたのか。…感謝する、レッド」
 アンタもか・・・!!


『第二セレクション後』
 何かの奇跡第二弾で、一位通過してしまった。
 ねえそこのステッキ持った妖精さん。やっぱり何か不安なんだけど、この結果。
 でも前回よりは、練習も割と効率よくできたと思うし、音楽的なことも勉強した。その甲斐あっての成果だったら、やっぱり嬉しい。・・・それにしたって出来過ぎだけど。
 昼休みに、図書室で読書と昼寝を同時進行しようと試みる少年に遭遇した。
「志水くん、さすがにそれは難しいと思うよ。頭が休みながら働こうとしてるんだから」
「あ・・・ええと・・・レッド先輩、おはようございます」
 寝ぼけているのか、自分に向けられた目が暫く動かない。この子マツゲ長いな~。
「ねえ、そんなに寝てないの? 具合は悪くなさそうだけど」
「寝てると思うんですけど・・・どうなんでしょう。音楽を聴いていると、いつの間にか3時間くらいたっていたりするから、もしかしたら寝ているのかもしれません・・・」
 相変わらずマイペースな・・・。まあこの自由さが彼の良いところだとも思う。
「そうだ、先輩・・・・・・やっぱりいいです」
「えっ? 何?」
 何か考えるような、・・・と言ってもいつものぼんやりとした目には変わりないけれど・・・、そんな顔をしたから慌てて聞き返したけど、さくさく教室に戻ってしまったので、その時は何が言いたかったのか分からなかった。
 その日も放課後に練習をしようとして、音楽室に向かう途中、もう一人の一年生に遭遇した。
「冬海ちゃ~ん」
「あ、ケチャ先輩・・・あっ、すっ、すみません、先輩を見てたら、つい・・・」
 つい?! ついなの?!!
 というか「ケチャ」って「ケチャップ」?!!
 唖然とする自分の前で、大人しい彼女が、普段よりも小さな声で、少し恥ずかしそうに言った。
「あの・・・これからケチャ先輩って呼んでもいいですか・・・?」
 レッドからケチャ・・・ああ、赤いだけが共通点なのか、とうまく回らない思考回路が意味を解釈したころ、上目遣いの彼女の可愛さに思わず、しかも明るく「いいよ」と言ってしまった自分は、たぶん悪くない。
 この学校では不思議なあだ名が流行っているのだろうか・・・。でも、他に変なあだ名の人はいない、と思う。
 ・・・金やんくらいか、発音が。
 そんな多少どうでも良いことで頭の33分の1くらいを占められながら、この日も練習を終えた。
 個人練習が中心だったから、明日からは少し人の多い場所で場慣れをしよう、なんて考えながら校舎を出るところで、前方に志水くんの楽器ケースが見えた。
 ケースの傍らにしゃがみ込んでいた本人が、ほどなくひょこと立ち上がったところで、目があった。
「あ・・・ケチャ先輩、お疲れ様です」
 昼休みから4、5時間の間に何があった・・・?!
 一人に許可出したら全員に回覧が回るシステムでもあるの?!!
 翌日も、人の多い場所を何となく避けて、練習室で個人練習をすることにした。


『第三セレクション後』
 三度のミラクルで、一位通過してしまった。
 確実に分かることは、実力以外の何かのおかげだということだけど、みんながそれに気づいているのか、気づいていないのか分からないから、やっぱり素直に喜べない。
 もちろん、自分も努力はしたけれど、明らかに「積み重ね」の部分で負けている自分は、やっぱり優遇されてるんだと思い知らされる。楽器が変わって間もないのに、楽器の性格を把握できるほど自分の技量なんてないことも分かっているし。
 それについて、みんながどうこう言うはずもないことも分かっているけれど、まだ自分の力で勝ち取った一位とは思えないこともあって、やっぱり少し後ろめたい。
 流石に最終セレクションともなると、みんないつも以上に練習に熱が入っていた。そんな熱の入り方が分かるくらいには、仲良くなれたんだと思った。
「ダンテ」
「ダンテちゃ~ん」
「君のことだよ、ダンテ」
「はっ・・・へっ・・・?!」
 両肩にとん、と手の重みを感じて振り返ると、対照的な先輩たちが立っていた。
「ダンテちゃん、これから練習? 偶然だね、これから俺たちもここで練習しようとしてたとこなんだ」
「俺たちって、僕は先生に用があるからもう行くよ」
「なんだ~、柚木練習しないのか~。折角俺と柚木とダンテちゃんで合奏できるかと思ったのに」
「仕方がないよ、また次の機会にしよう。じゃあ、二人とも練習頑張って」
 何で、何で、何故にどういう経緯でわたくし日野香穂子のニックネームがそんな強そうな名前になったんですか・・・。
 唖然としている自分の横で繰り広げられる会話にも、それらしい単語が入っていたような気がしたが、その時の自分の頭は、会話に加わる余力さえもないほどに、その名称に向かってフル回転していた。
 ダンテって何。
 ダンテって何。
 ぐるぐると回るダンディズム溢れる名前にくらくらしながら、立ち去る柚木先輩にどうにかこうにか挨拶をしたけれど、とても練習する気分にならなくて、とりあえず音出しだけはして、早めに帰ることにした。
 帰宅して、ネットで「ダンテ」を検索して知ったが、あるゲームのキャラクターらしい。そのキャラクターは明らかにがっちりした男で、銀髪で、ギターを持っているという点で楽器の要素はあった。
 けれど、ほどなく気が付いた。気が付いてしまった。
 ・・・・・・ジャケットが赤いだけじゃん・・・!!!
 そのキャラクターの纏うハードなレザー系のジャケットが、眩しいほどに赤かった。
 ああ・・・・・・。とうとう「赤」という共通点はここまで来てしまったのか。
 自分を「それ」で呼ぶ先輩たちの笑顔には、少しの曇りもなかった。純粋に、まじめに「それ」を自分のニックネームとして採用している。
 他意がないことが判明したけれど、やっぱり再三のミラクルよりも腑に落ちなかった。


『最終セレクション後』
 ダンテ、ダンテちゃん、ダンテ先輩と呼ばれ続けながらついに最終日を迎え、ミラクルは最後まで続いた。
 いろいろと大変だったけれど、セレクションに参加できたこと、音楽を通して素敵な人に出会えたことはとても良かったと思う。
 今後、自分の音楽を支えてくれたあの妖精さんたちは見えなくなる。でも、自分はきっと音楽をやめないし、やめるつもりもない。むしろ、これからもっと自分の音楽が出来るようになるんじゃないかと思う。
「おーい!」
 少しだけ、しみじみとした思いで校門をくぐろうとした時、後ろからよく知った友人の声が聞こえた。
「おーい! ちょっと待って!」
 追いついてきた彼女、報道部の天羽ちゃんは、脚線美を惜しげもなくさらしながら自分の元まで全力疾走してきて、直前でスライディングよろしくブレーキをかけて自分の前に立った。
 少し遅れて、カメラ隊がついてくる。走り慣れているのは天羽ちゃんただ一人のような気がした。
「ごめんごめん、探したよ。まずは、優勝おめでとう!」
「ありがとう~」
「じゃ、さっそくインタビューさせてね。あー、うん」
 軽くマイクのテストをすると、彼女は「報道部」として、自分にマイクを向けた。
「ダンテさん、セレクション優勝おめでとうございます。ご感想はいかがですか?」
 彼女の口元から自分の口元に運ばれるマイクを見つめながら、大きく息を吸った。
 そして、マイクに向かって、ずっと言いたかった一言を、心の底から叫んだ。

「・・・私は、ダンテじゃない!!!!!」





あとがき

これを書かせていただいた当時はゲーム未プレイでした。
後でちゃんとプレイしましたが、ニックネームは1つでしたね!(そこからか!)
今更ながら、こんなんでごめんなさい…。

キャラクターの名前が変えられる時は、一周目はデフォルトで、
二周目は必ずふざけた名前を付けてしまいます。
主人公が無自我だと思ってやりたい放題です(笑)
こういう遊び方をしない方にとってはつまらない話になってしまいましたね(^^;)

ダンテさんのお名前は某ゲームより拝借。
実際に設定してみると、呼ばれる瞬間がいろんな意味で待ち遠しかったです(笑)



お題配布元:
おつまみ提供所。
【後に続けて書くお題】
1:その時私は、彼が言ったその台詞の意味をいまいち理解出来ていなかった。→コルダ
2:勢い良く扉を開けて、案の定な様子に私は盛大な溜め息をつく。→DQ5
3:いきなりだが、私は物凄く悩んでいた。どうしてこの人がここにいるのだろう?→オリジ
4:あの日からどれだけ、俺はコイツに振り回されたことだろう。→FF6(本家)
5:本当は凄く近い所に、答えはあった。けれど、私はそれを探すことに酷く苦労させられた。→幻水1
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