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過去にアンケートのお礼として、ご協力いただいた方にのみ公開していました。

初オリジSS。ファーレと兄ジェラルトでほのぼの風味 in フィガロです。






 いきなりだが、私は物凄く悩んでいた。どうしてこの人がここにいるのだろう?
 いつもと変わらぬ砂漠の昼下がり。一日の内で一番気温の高いこの時間は、皆場内にいることが多い。照りつける日差しは容赦がないが、この城はそんな過酷な環境から住人を守っていた。
 先ほどまで戦場であった厨房では、戦いを終えた料理人達が遅い昼食を取っていた。
 そんな厨房の前に、わずかな人だかりを見つけて、思わず立ち止まる。料理人の女の子達に、笑顔で話しかけているその人物は、私がよく知っている男だった。
 空のおぼんを持ったまま立ちつくす私に気が付いたらしい女の子が、こちらを指さして、その手に従って男がこちらに向き直り、そして両手を大きく広げて満面の笑みを浮かべた。
「ファーレ! 会いたかったよ!!」
 駆け寄ってくる男の、意外と逞しい腕にがっちりホールドされながら、私は思わず呻いた。
「・・・来るなら来ると、そう連絡を下さいったら・・・」
「あれっ、おかしいなー。先発の行商人に手紙を預けたはずなんだが」
「行商人より早く着いたのね・・・、ああもう、いい加減暑いですから、離して下さいよ」
 もうちょっと甘えてくれても、などと呟きながらも彼はあっさり手を離した。
 実際に会うのは数年ぶりだったが、記憶の中の姿とまったく変わらなかった。その笑顔も、テンションも。
 相変わらずのその姿に呆れ半分、嬉しさ半分で、私も少し笑った。
「手紙をよこすのなら伝書鳩を使ったらいいのに」
「いやぁ、フィガロに来ることを決めたのが最近だったもんだからさー」
 思いつきに近いものを感じて、私は思わず脱力したが、それと同時に冷たいものが背中を走った。
「ということは、連絡無しで入国許可を頂いたということですか?! いえそれ以前に、ちゃんと手続きはしたんですか?!」
 慌てて確認すると、彼は得意満面と言わんばかりの笑顔で胸を張った。
「大丈夫だって。俺も商人だからね、ちゃ~んと手続きも商談もさせていただいたよ。いやぁこの国の人はいい人が多いね! 毛色の違う人たちも多いようだけど、明らかによそ者の俺にも親切親切! おかげですぐにお前に会えたし。お前がここにずーっといたがるのも分かるよ!」
 とりあえず、正規の方法で入国していたことに安堵して、商談まで済んでいることについては問わないことにした。
 昔から神出鬼没だったけれど、更に磨きがかかっているのではないかと思う。いくら神出鬼没でも、砂漠の真ん中に思いつきで来られるほど、この城は親切な立地ではない。暫く離れていた所為かもしれないが・・・。
 その行動力は、少し尊敬するわ。
 そんなことを考えている時、厨房の方からこちらを窺う人影に気が付いた。
「あ、いけない。これから夕食の仕込みがありますから。今日はどうするんです?」
「おお、ファーレの仕事だね? じゃあ俺は場内を見学させてもらうよ。実はその許可も貰っているんだよ! ほらこれこれ! 宿の許可も貰ってるからね! 夜は話せるんだろう?」
「遅くになりますけど、それで良ければ夜更けにまたこちらに」
「よしそうしよう! じゃ、ファーレは仕事頑張るんだよ!」
 廊下で必要以上に大きな声と大きなジェスチャーを振りまきながら去っていく彼は、明らかに場内の注目を集めていた。
「あの、料理長?」
「はい?」
 控えめな声に振り向くと、先ほど厨房の方から様子を窺っていた料理人達がざらりと立っていた。女の子の欠席者はいなかった。
「今の方、どなたですか?」
「恋人ですか?」
「名前呼び捨てでしたしね~」
「こらっ、料理長にはあの方がいらっしゃるのよっ」
「じゃあ昔の恋人ですか?」
「幼なじみとか?」
「でも結構歳離れてる感じでしたよね?」
「じゃあじゃあ、従兄弟さんとか、故郷のお友達とか?」
 綺麗な瞳を、みんなして「期待」という字で輝かせながら、私の前で様々な憶測をして、それがまた別の方向に発展することを繰り返していた。
 そんな様子に、思わず小さく吹き出して、私は彼女たちに言った。
「ふふ、全部はずれ、ですよ」
 ええ~、と疑問の残る声をあげる彼女たちが可愛くて、思わず声を上げて笑ってしまった。
 聞いてもきっと面白くないですよ、と前置きしてから、答えを教えてあげた。
「あれは私の兄、です」


 その日、夕食が終わる頃にはあの兄の話はあちこちに広がっていた。私の名前を親しげに呼ぶ様子や、昼間の抱擁のみを目撃した人などは、実に様々な憶測をたてて赤くなったり青くなったりしていたとか。失礼してしまうわ。
「やあ、お疲れ様ファーレ」
「待たせてしまいましたね。どうぞ座って、少し飲むでしょう?」
 食堂の隅のテーブルに座らせ、グラスを二つとワインの入ったボトルを取り出した。
 もちろん、このワインは調理用とは別物。貰ったり、余ったりして自分の手元にあるものだった。
 琥珀色の液体を注いで、向かい側に差し出す。
 燭台の明かりが、グラスの中の琥珀を黄金に変えた。
「じゃ、再会に乾杯~」
「大げさね、乾杯」
 実際、会ったのが数年ぶりなら大げさでもないのだろうが、彼の動きはいつも大げさなので、どうにも久しぶりという気がしない。
 まあ、この気さくっぷりが商談には向いているのでしょうね。
「元気そうで安心したよ」
「ええ、兄さんも」
「しかも料理長とは驚いたよ! 昔からお茶菓子を作るのは得意だったけれどね」
「そうね・・・私も、とても嬉しいんです。よそ者の私が陛下のお役に立てて、皆さんの喜ぶ顔が見られて」
「うんうん。みんなも嬉しそうだったよ」
「はい?」
「城内でそれらしい人に『ファーレの料理はおいしいですか?』って聞いてみたら、全員笑顔で頷いてくれたよ!」
「う・・・・・・」
 恥ずかしげもなくそんなことを・・・・・・。
 こんな、人好きのする性格が羨ましいこともあるけれど、手当たり次第に誰にでも何でも話せてしまうこの能力は、人の迷惑にならないところで発揮してほしかった。
 明日誰に何を言われるかわからないわ・・・。
 思わず頭を抱えた私に、彼は相変わらずにこにこしていた。
「ところでファーレ」
「何ですか、兄さん」
「婚約したそうだね」
「・・・まさかそれも城内で聞いたなんてことは・・・」
 一瞬絶望的な想像が頭をよぎり、頭からすう、と温度が下がっていく心地を覚えた。
「いやいや、これはお前が実家に送った手紙で知ったんだ。まったく・・・なんでお兄ちゃんに内緒なんだよう」
「だって騒ぐ・・・・・・いえ、反対するでしょう?」
「うん」
「だからですよ」
「うん、反対しようと思ったよ。だけどね」
 そこで彼は一度言葉を切って、グラスを少しだけ傾ける。
 不思議に思って私が顔を上げると、そこには「兄」の顔をした兄さんの穏やかな顔があった。
「今日お前に会って、仕事をしてる姿や、お前の料理を食べた人の顔を見たら、幸せなんだって分かったから、反対はもうしない」
 安心したような表情で、普段は言わない保護者側のセリフを言われて、私は思わず言葉を失った。
 これでちゃんと心配してくれていたのだと思うと、黙っていたのは悪かったかもしれない。
 そんな事を考えながら、兄さんの言葉に笑顔を向けていると、突然彼は手元のグラスを一気にあおり、空になったグラスをだむっ、とテーブルに押しつけた。
「でもな!!!」
「ちょっ・・・兄さん?」
 グラスを見つめる兄の顔が、ゆっくりをこちらを向く。
「いい奴なのか?」
 勢いのあるアクションとは裏腹に、勢いのない言葉に、私は思わず笑うように息をついて、この兄にそれなりに話すことにした。
「ええ、いい方よ、とっても」
「例えばどんな風に?」
「兄さんと違って落ち着きがあって、兄さんと違って物静かで・・・」
「ファ~レ~・・・・・・」
 ぐたりとテーブルに崩れ落ちる兄に微笑みながら、テーブルに肘をついたまま向かい側にちょっと身を乗り出して、彼のつむじあたりに向かって言葉を続けた。
「時々とっても優しい目をする人よ」
 そういう意味では、兄さんと少し、似ているかもしれない。
 声をかけると返事の少し前に返ってくる小さな微笑み、おいしいと言ってくれる時の目元。出会った頃から少しずつ見つけた優しい表情。
 その人のそんな表情を一つ一つ思い出すと、思わず自分の口元も笑みの形にほころんだ。
「ファーレ・・・」
 兄さんはのろのろと私の顔を見上げて、暫くぼんやりと眺めていたと思ったら、急に起きあがって私の両肩をがっしりと掴んだ。
「よし会わせろ! さあ会わせろ!!」
 ・・・・・・前言撤回。ちょっとでも似てるなんて思った私が失礼極まりなかったわ。
「ちょっと兄さん、酔ってるんですか?」
「そんな幸せいっぱい愛情いっぱいな顔されて黙って帰れるか!!」
「理論の意味が分かりませんっ」
「人に紹介出来ないような奴なのか?!」
「失礼なこと言わないで! 私にはもったいないくらい素敵な方よ!」
「うああああファーレがお兄ちゃんを信じてくれないいいい」
 私の反論にへこんだのか、単に酔っているのか分からないセリフで、再びテーブルに伏せるようにずるずると沈み込んでいく兄を見ながら、私は小さく、けれどちゃんと聞こえるようにため息をついた。
「あのね、兄さん。分かってると思いますけど、兄さんが心配するようなこと、何にもないんですよ。私が、あの方を愛しいと思っている、本当はそれだけで十分だと思っているでしょう?」
「・・・・・・」
「ね・・・兄さん?」
「・・・・・・」
「・・・このタイミングで寝るのね」
 寝たふりかもしれないとは思ったが、この沈黙を「了解」と見なしてそのまま寝かせることにした。寝たふりなら、そのうち自分で眠る場所へ帰るだろう。
 グラスを洗って元の場所に片付け、ついでに朝のメニューを確認してから兄のもとへ戻る。
 相変わらず伏したままの兄は、どうやら本当に眠ってしまったらしかった。
 流石に成人男性を運ぶことはできないので、毛布を持ってきて頭からすっぽりかぶせてやる。その時に顔をのぞき込んでみたが、案外気持ちよさそうな顔をして眠っていた。
 最初から、反対する気なんかなかったんでしょうね。
「・・・おやすみなさい」
 小さく囁いて、昔兄がしてくれたように頭の上に軽く口づけを落とした。




あとがき

ファーレは某国の親衛隊参加がきっかけで、初めて作ったオリキャラです。
周囲の方々に恵まれて、10年近くキャラとして生きてこられました(感謝)
版権ワールドをお借りしていますが、事実上初のオリジナルSSになりました。

彼女には婚約者様がいます。
許可を頂いていなかったのでお名前は出しませんでしたが、
本当に素敵な方なんですよ~v ご存じの方も多いと思いますが(笑)
婚約していながら、あんまりべたべたしないイメージですがどうですか?(聞かれても)

故郷には兄一人、姉二人、甥一人、姪一人がいます。
お兄ちゃんは今回めでたく出演となりました。
末っ子のファーレを溺愛しています(笑)



お題配布元:
おつまみ提供所。
【後に続けて書くお題】
1:その時私は、彼が言ったその台詞の意味をいまいち理解出来ていなかった。→コルダ
2:勢い良く扉を開けて、案の定な様子に私は盛大な溜め息をつく。→DQ5
3:いきなりだが、私は物凄く悩んでいた。どうしてこの人がここにいるのだろう?→オリジ
4:あの日からどれだけ、俺はコイツに振り回されたことだろう。→FF6(本家)
5:本当は凄く近い所に、答えはあった。けれど、私はそれを探すことに酷く苦労させられた。→幻水1
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